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車輪から世界へ
育志館大学受験科ウィンゲート講師の一色です。
前回はインド・ヨーロッパ語族の話をしました。
その中で、インドやヨーロッパにはよく似た単語が多いということを書きましたが、今回は「車輪」という言葉に注目してみたいと思います。
例えば、車輪等円形のものを指す単語として、英語の「サイクル」がありますが、この単語はラテン語では「シクル」、サンスクリット語では「チャクラ」と対応します。
(今回も無理やりカタカナ表記にしているため正確な音ではありません)
このようにヨーロッパとインドでは車輪に関連する単語で類似するものが多く、インド・ヨーロッパ祖語にも車輪に関する単語が多かったのではないかと推測されています。
ということは、インド・ヨーロッパ祖語を話す人たちは車輪が発明された後に、車輪を使いやすい地域(例えば中央ヨーロッパのステップ地域)に住んでいたのではないかという仮説が成り立つのです。
この車輪ですが、実は人類の文明史では非常に大きな発明品なんです。
これまで持ち上げられないほど重いものや大量の物を運ぼうと思ったら、地面を引きずって運ぶしかありませんでした。
これには多くの力が必要になることは皆さんも体験したことがあると思います。
理由はもちろん、物体と地面との間に摩擦力が発生するからです。
一方物体に車輪がついていたら、引きずるよりもはるかに軽い力で動かせますよね。
この場合も物体と地面との間には当然摩擦力がかかるのですが、この場合の摩擦力は転がり摩擦力といって、引きずる場合よりはるかに弱い摩擦力になるのです。
ではなぜ転がる方が摩擦力が小さいのでしょうか。
そもそも摩擦力は物体を動かす際に、物体と地面の接地面付近が引きずられることで変形しようとすることが原因で発生します。
変形やその変形から戻る際に熱エネルギーが発生するため、仕事の一部がそれら熱エネルギーとして散逸するので、運動エネルギーが減ってしまうというわけです。
つまり車輪が転がる際は、地面や車輪が変形しにくい構造になっているから軽い力で物を運べるのです。
この発明により、人類の流通技術は革命的に進歩しました。
より遠方との取引が可能になったので、人類はグローバルな交流をするようになったのです。
まさにインターネットに匹敵する大発明だと思いませんか?
それほど素晴らしい車輪という技術ですが、その後一気に世界中に広まったというわけではありません。
車輪が適している地域とそうではない地域があるのです。
先ほど挙げたステップ地域では、見渡す限りの草原地帯なので車輪にはぴったりですね。
それに比べて砂漠地域ではどうでしょうか。
車輪が砂に埋まってしまってすぐに動かなくなってしまいます。
それならラクダに載せて歩かせた方が便利ですよね。
そのため砂漠地域ではラクダによる「馬車」は一般的ではありません。
日本のように山や川が多い地域もそうです。
平安時代には貴族たちが乗る牛車が使われていましたが、これはあくまで道が整備されている洛中で乗るための物です。
洛外では貴族たちも、輿か馬で移動します。
実は蜻蛉日記には牛車を無理矢理船に載せて宇治川を渡る描写があるのですが、こんなことは世をときめく兼家の妻だからできることであって、普通のことではありません。
だからこそわざわざ日記に詳細を書く価値があるのです。
古典に書いてあることが当時の常識だと思わないようにしてくださいね。
とにかくそういう地形の国なので、日本では馬車や戦車など車輪を使う道具の発達が遅く、その代わり馬や船による流通網が整備されていきました。
車輪というキーワード一つで色んな想像ができますね。
皆さんもぜひ学問を好き嫌いせず、世の中のあらゆるものを楽しんでみてください。
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