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芸術鑑賞

みなさんこんにちは。大学受験科の谷です。

 

いよいよ試験前。試験日は学校によって異なるのですが、自習室は常に緊張感に満ちています。

 

情報科のプリントを何度も解きなおしたり、古文単語を覚えたりと忙しそうにしている生徒たちを見ているからか、

 

最近頻繁に高校生の自分が試験を受けるという夢を見ます。

 

夢の中では試験問題が一問も解けず焦ったり嘆いたりしているのですが、

 

生徒たちにはそうならないようにしてほしいものです。

 

さて、今週も私の愛読している本を紹介したいと思います。

 

それはNHKブックスから出ている若桑みどり著『絵画を読む イコノロジー入門』です。

 

著者の若桑みどり先生は主にイタリア美術を図像解釈学(イコノロジー)という視点から読み解こうとした美術史学者です。

 

この本はもう絶版になっているのですが、中古本なら安価で手に入れることができます。

 

私は大学時代に、芸術がわかる男になって美術館に行ってみたいと思って購入し、以降愛読しています。

 

さて、若桑先生は絵画を学問として鑑賞することについてこのように述べておられます。

 

 

「美術鑑賞は理屈ではない。自分がいいと思えばそれでたくさんだ」という反発が少数であったが寄せられた。

 

私はそのことに反対するのでもなければ否定するのでもない。どう芸術を見ようとそれは自由である。

 

宇宙がどのような仕組みになっていて、太陽と地球がどういう関係であるかを知らなくても、空の太陽は美しいし、星はきらめいている。

 

だが、人類は宇宙の仕組みを研究してきた。なんであれ、ことがらの真実を知ることを学問と言う。

 

(中略)

 

素人も、もし、科学の成果によって、太陽の遠さ、その熱を知らされ、地球の自転を知り、

 

地球がはてしない宇宙のなかの小さい丸い星であることを知ったとしたならば、

 

彼がタ焼けを見、星を見る思いには確実に変化が起きるであろう。

 

地球が宇宙の運動のなかに投げこまれている、小さくはかない、無限の空間のなかの一点にすぎない、

 

という感覚が、その知識から生まれたとき、われわれには仰ぐ空の深さはいっそう深いものになり、

 

空間は無限の感覚を呼び覚まし、宇宙に対する感受性はいっそう研ぎ澄まされるのである。

 

事実についての知識は、感受性を深めこそすれ決してそれを抹殺しない。

 

芸術は感性のみによって制作されているのではなく、人間のもつあらゆる能力や技術や経済的関係によって生み出されるのである。

 

もしそうであれば、それを総合的に理解しようと、かりに望むならば、鑑賞者も知性や知識や洞察力を働かせるのは当然である。

 

 

なかなか興味深い指摘ですよね。つまり、あらゆる視点から絵画を分析しようとなると、

 

感性だけではなく学問の知識が必要で、それらを作品と結びつける洞察力を働かせて鑑賞しなければならないということです。

 

この部分を読んだ当時大学生の私は、絵画を見るだけなのにここまでややこしいなんて、と思いました。

 

しかし、あらゆる物事の本質に迫ろうとすれば、学問を学ばなければならないということです。

 

受験生の皆さんも、今の受験勉強はきっと将来、何かについてもっと知りたいとか研究したいと思ったとき必ず役に立つと思います。

 

様々な教科を一生懸命に吸収して、毎日の時間を無駄にせず入試まで走り続けてほしいです。

 

そして息抜きには、ゴッホの絵など眺めてみてはいかがでしょうか。

 

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