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天が人の上に人を造る話
育志館大学受験科ウィンゲート講師の一色です。
前回に続いて今回も格言を一つご紹介します。
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」
福沢諭吉の「学問のすすめ」の冒頭の言葉です。
あまりにも有名なので知らない人はいないでしょう。
それだけでなく、実は誤解されることが多いのでも有名なんです。
原文をよく見てみましょう。
”「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えり。”
実はこの文の後ろには「と言えり」が続いているんです。
「り」の識別は古文の超重要事項。直前がエ段になっているので、この「り」は「完了・存続の助動詞」ですね。
つまり、この文は福沢諭吉が言った言葉ではなく、当時すでに言われていた言葉を引用しただけなんです。
では「天は~」の文は誰の言葉なのでしょうか。
”We hold these truths to be self-evident: that all men are created equal; that they are endowed, by their Creator,・・・”
これはアメリカ独立宣言の一部です。「天は~」の文はここからの引用だったんです。
そして「学問のすすめ」はさらに
”されども今、広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥どろとの相違あるに似たるはなんぞや。”
と続きます。
「されども」という逆接の接続語があるので、「天は~」の文は実は譲歩で、本当に言いたいのはその後、「実際は人は平等じゃない」の部分なんです。
だからその不平等を少しでも埋めるために学問を勧めているんです。
このように文章は一部分だけ見るのではなく、文脈全体を見て解釈しないといけません。
時には前後だけでなく、その文がかかれた時代や状況、書いた人の経歴など、書かれていない背景にも注目する必要もあります。
そういう正しい文章の読み方を高校で習うのですが、はたしてどれだけの人がちゃんとした読解力を身につけているのか正直疑問です。
今はインターネットで大量の情報を簡単に入手できるようになりました。
だからこそ、正しい読解力を身につけて、その情報の真の意味を理解しなければいけません。
国語の授業はとっても大事です。
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