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今の言語から歴史がわかる話
皆さんは「語族」という言葉をちゃんと理解できていますか?
世界史では「インド・ヨーロッパ語族」などの表現で習いますね。
語族という概念は本来言語学の分野に属するものなので、世界史の授業では詳細を説明されていないかもしれません。
今回はそんな「語族」について少し掘り下げてみたいと思います。
簡単に言えば語族とは、似ている言語を一つのグループにまとめた概念です。
分かりやすい例として音韻(単語の発音)に注目してみましょう。
「足」に対応する単語は大抵の言語に存在します。
そして体の下部についている二本の棒状の部位を「あし」と呼ぶことに必然性はありません。
私たちの祖先が足を「うで」や「あご」と表現しても何もおかしくないはずです。
つまり「あし」という表現が生まれたのは全くの偶然。
ということは、もし足のことを「あす」などと発音する言語があれば、それは偶然ではなく、日本語と密接な関係がある言語だと見なせるはずです。
ヨーロッパにはたくさんの言語が存在しますが、足に対応する単語では発音が似ているものが多く存在します。
例えば、
英語 フット
ドイツ語 フース
フランス語 ピエ
ラテン語 ペース
などです。(比較のためむりやりカタカナ表記にしているので正確ではありません。)
以前少し触れましたがf、h、pの発音はよく遷移を起こすことをふまえると、これらの発音はとても良く似ていると言えます。
それだけでなく、古代インドの言語であるサンスクリット語でも「パート」と発音していたことが分かっています。
これらの言語は足に限らず多くの単語で類似性があり、さらに文法や文字体系にも共通点が見られます。
ヨーロッパと遠く離れたインドでよく似た言語が存在するのは不思議ですね。
ともかくこれは偶然とは考えにくいので、インド・ヨーロッパ語族というグループが作られたのです。
今ではインド・ヨーロッパ語族の言語には共通の祖先となる言語「インド・ヨーロッパ祖語」があったのではないかと考えられていて、その復元作業や使われていた地域の特定が進んでいます。
文字が一切残っていない言語を復元するなんてロマンがある研究だと思いませんか?
ところで、スペインとフランスの国境付近に住んでいるバスク人はバスク語という言語を使っています。
このバスク語ですが、実は他のどの言語とも似ていない「孤立した言語」なんです。
インド・ヨーロッパ語族が広まる前に西ヨーロッパに存在した唯一現存する言語とされていて、このことからかつては西ヨーロッパに広くいた民族が、今ではピレネー山脈の山岳部に追いやられてしまったのではないかという仮説も成り立つのです。
一方、日本語も他の言語との類似性が見られない「孤立した言語」です。
現在日本語がどの言語と似ているのか様々な仮説が提唱されて研究が進んでいますが、これはつまり日本人の祖先がいったいどこから来たのかに関わる極めて重要な研究と言えるのです。
世界史はもともと、文献を研究する「歴史学」と出土品を研究する「考古学」によって作られてきました。
しかし、この語族の研究が進むことで、文献にも遺跡にも現れない古代の民族の移動の様子などが分かってくるのです。
つまり言語学が世界の歴史を明らかにするというわけです。
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