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「prince」はどれくらい偉いのか

育志館大学受験科ウィンゲート講師の一色です。

 

GWをはさんで久しぶりの更新です。

前回はウェールズ産の石炭の話をしたので、今回はウェールズにまつわるお話をしましょう。

 

皆さんはプリンス・オブ・ウェールズという言葉を聞いたことがありますか。

イギリス国王の後継者に与えられる称号で、王太子を意味する言葉です。

ただし直訳はもちろん「ウェールズのプリンス」ですよね。

この「プリンス」という単語ですが、語源は帝政ローマの「プリンケプス」にさかのぼります。

ローマ市民の第一人者という意味で、皇帝が名乗る称号の一つです。

「prime minister」の「prime」等の単語に使われる「pri/pre」という接頭辞が、「先、一番」といった意味であることからも一番立場が上の人、つまり元首が名乗る称号なのが分かりますね。

ここから「prince」という言葉が派生し、ヨーロッパでは「king」を名乗るほどではない小国の元首が名乗るようになります。

今でも国王を名乗っていない独立国の元首の中には、この「prince」を名乗っていることがあります。

例えば、モナコ公国の元首は「Principauté de Monaco」、アンドラ公国の元首は「Principat d’Andorra」を名乗っています。

この場合のプリンスは日本語では「公」と訳すことが多いです。

 

さて「プリンス・オブ・ウェールズ」ですが、こちらも元々はウェールズの元首が名乗る称号でした。

日本語で表現するならウェールズ公国の元首「ウェールズ公」といった感じですね。

13世紀にウェールズ全土を支配したルウェリンが名乗ったのが起源とされています。

しかし、イングランドのエドワード1世によってウェールズは征服されてしまい、ルウェリンは病死、その跡を継いだ弟のダヴィッドも処刑されてしまいます。

その後独立国ではなくなったウェールズの元首号「プリンス・オブ・ウェールズ」はウェールズ人を懐柔するために廃止はせず、代わりに王太子のエドワード(後のエドワード2世)に与えられました。

この王太子エドワードが生まれるときは、わざわざ妊娠中の王妃をウェールズまで連れて行って出産させて、エドワードがウェールズ生まれであるということでウェールズ人たちを納得させたという話が残っています。

半分伝説めいた話ですが、エドワード1世がウェールズを統治するのに細心の注意を払っていたことが伺えますね。

ここからイングランド王室の王太子が「プリンス・オブ・ウェールズ」を名乗る伝統が始まったのです。

 

実は王子を英語で「prince」と表現するのは王太子が「プリンス・オブ・ウェールズ」を名乗っていることに由来します。

今ではこちらの意味の方が主流になっていますが、歴史をさかのぼるとローマ皇帝に由来するとても格が高い言葉だったのです。

 

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