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「name」を「ナーメ」と発音したい

育志館大学受験科ウィンゲート講師の一色です。

 

英語の学び始めの段階で、誰もが通る道ですよね。

英語は綴りと発音が一致していなくて覚えにくいと思いませんか?

例えば表題の「name」も、「ナーメ」と読むなら覚えやすいのに、「ネイム」なんて変な読み方をするせいで、「neimu」と書く中学生

が後を絶ちません。

実はドイツ語では同じ綴りで「ナーメ」と読むんです。

英語と比べると、ドイツ語やフランス語など大陸側の言語は綴りと発音が一致していることが多くて覚えやすいんですよ。

今回はなぜこんな事になったのか、少しだけ背景を探ってみましょう

 

実はイングランドでもかつては「name」を「ナーメ」と発音していました。

言語はまず音が先にあって、それを文字を使って記録するので、発音と綴りが一致しているのが普通です。

しかしどの言語でも発音は時代ごとに変化します。

例えば日本語でも、奈良時代は「母(ハハ)」を「パパ」と発音してたんですよ。

英語の場合、特に母音が変化することが多かったようです。

これを母音推移というのですが、特に中英語から近代英語に変化する際の母音推移が大規模なものでした。

これを大母音推移といいます。

15世紀から16世紀にかけて、ちょうど百年戦争からチューダー朝の時期です。

「name」のaの発音が長母音の「アー」から二重母音の「エイ」に変化したのもこの頃です。

「rain」と「rein」が同じ発音になったのもそうです。発音が同じなのに綴りが違うのも面倒くさい話ですよね。

他にも今の英語の発音のほとんどがこの時期に完成しました。

この母音推移の理由はよく分かっていません。

一説にはフランスとの対立から、フランス語風の発音を改めようとしたとも言われていますが、それだけの理由で言語全体の発音体系が変

わるとも思えないので、おそらく様々な要因が複合的に作用したのでしょう。

 

ところで、普通は発音が変わればそれに合わせて綴りも変わるはずです。

しかし一般的には発音よりも綴りの方が変化しにくいと言われています。

綴りは文書として記録に残るので、固定化されやすいんです。

これは日本語にも当てはまりますよ。

助詞の「は」「へ」「を」は、それぞれ「わ」「え」「お」と発音していますが、かつては違う発音をしていました。

発音が変わっても綴りだけは変化せずに残っているわけです。

英語の場合も、大母音推移によって発音が変わったにもかかわらず、綴りは変化していないことが多いようです。

特に大母音推移が始まった15世紀は、グーテンベルクが活版印刷を開発した時期でもあります。

印刷物が大量につくられるようになったことも、綴り固定化の一因かもしれません。

 

英語で綴りと発音が一致しないのには以上のような背景があったんですね。

なぜ英語だけこうなったのか分からないことだらけなのですが、綴りや発音が少しは面白くなりませんか?

一見面倒くさそうに思えることでも、少し深めてみると面白く感じることがよくあります。

どの教科でも嫌いなものほど深めてみるのがお勧めですよ。

 

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