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古今集は常識です
育志館大学受験科ウィンゲート講師の一色です。
5月ももう終わりですが、最近暑い日が続いていますね。
確か去年の今頃はもう梅雨入りしていました。
記録的な早さだったのを覚えています。
今年は6月上旬頃になる予想のようですね。
さて、梅雨に降る雨を五月雨と呼ぶ話を去年の今頃ブログに書きました。
五月雨と言えば有名な俳句がありますね。
五月雨を集めて早し最上川
言わずと知れた芭蕉の代表作の一つです。
実はこの句、奥の細道に書かれる前は別の表現だったのを知っていますか。
五月雨を集めて涼し最上川
当初は「早し」ではなく「涼し」だったのです。
一字違うだけで句の意味ががらりと変わりますね。
「涼し」であればなんてことはない、夏に川辺で涼をとっているだけの句です。
しかし芭蕉はこの句を句会で読んだ後、最上川の川下りを体験したそうで、そこでのスリルがとても印象に残ったそうです。
そこで句を改めて、川の流れの激しさを表現するようにしたわけです。
そもそも最上川は古今集あたりから詠まれるようになった歌枕で、舟を同時に詠み込むのが定番でした。
歌に何か事物を詠み込むときはそれぞれ定番の使い方があって、近代以前の歌人はまずその定番を学ぶところから始めるのです。
そこから徐々にオリジナルの詠み込み方をし出すわけで、芭蕉の「涼し」はその様な意味で最上川の革新的な詠み込み方だったのです。
その最上川を「早し」と詠むのも独特ではあるのですが、これは実は最初ではありません。
最上川はやくぞ増さる雨雲ののぼればくだる五月雨のころ
兼好法師が上記の歌を詠んでいます。
芭蕉ほどの俳人がこの歌を知らなかったとは思えないので、もしかしたら意識して取ったのかもしれません。
もちろんそれだけで芭蕉の句の革新性が薄れるわけではないですが。
このように歌や句を読むときは、先行する他の歌や句と比べることで初めて、その全体像が鮮明に見えてくるのです。
一つの歌や句をじっと眺めているだけではほとんど何もわかりません。
表題は大げさかもしれませんが、例えば平安時代の貴族であれば、古今集くらいは全て暗唱できるのが常識でした。
その上で歌を詠むわけですから、古今集を見たこともない人にその歌の意味が分かるはずもありません。
主だった歌集や句集は一通り目を通しておくと歌の世界がはるかに楽しくなりますよ。
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