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古生代が支えた日本海海戦
育志館大学受験科ウィンゲート講師の一色です。
前回お話したように石油は現代の最重要資源の一つですが、石炭も非常に重要な資源です。
石炭と言えば何となく時代遅れに感じるかもしれませんが、実は今でも日本の火力発電の約3割が石炭火力です。
安価で安定的に確保できる点で石炭には石油や天然ガスにない利点があり、原子力発電を減らさなければならない今、むしろ需要が増しているのです。
石油も石炭も、かつて海底だった地層が隆起して採掘しやすい状態になった場所でよくとれます。
石炭は石油と違って植物の死骸から作られますが、どちらも生物の死骸が海底にたまり地中で圧力をかけられ続けて作られる点は共通しているからです。
ただ、石油が比重が軽いために石油だまりにたまるのに対し、石炭は地層中で移動することはありません。
そのため隆起したばかりの新期造山帯よりも、隆起してから十分風化して石炭を含む地層が地表近くに現れたような場所が、理想的な産出地になるのです。
石炭の産出地が古期造山帯に多いのはこのような理由があるのです。
さて、石油や天然ガスの可採年数が50年ほどとされているのに対し、石炭の可採年数は150年ほどと言われています。
枯渇資源ではあるものの比較的豊富なので、現代では石炭はとても安く手に入ります。
最近ロシアとの貿易を見直す動きが話題になっていますが、ロシアは世界有数の石炭産出国にもかかわらず、話題に上るのは石油や天然ガスばかりですよね。
石炭は仕入れ先を簡単に変えることができるので、外交カードになりにくいのです。
とはいえ、石油がまだ一般的でなかった19世紀以前は、エネルギー資源と言えばほぼ石炭しかありませんでした。
その頃の石炭は今とは全く違う価値を持って持っていました。
石炭は古代から燃料として細々と使われてきました。
しかし18世紀になると、蒸気機関が普及してその燃料として石炭が使われ始め、さらにその蒸気機関とコークスを利用した製鉄法が普及したことで、爆発的に石炭の需要が増えました。
石油の採掘技術が開発されるまでの18〜19世紀は、エネルギー資源といえば石炭しかない時代で、石炭は十分に戦略資源だったのです。
石炭と言っても実は炭化の進み具合によって様々な種類があります。
一般的に炭化が進めば進むほど、エネルギー効率がよく煙も出にくいので優秀な石炭と言えます。
特に炭化が進んで炭素の含有率が90%を超えているものを無煙炭と言って、かつては「ブラックダイヤモンド」とも呼ばれるほど高価な物でした。
こちらは特に軍艦の燃料として優秀です。
軍艦は石炭の積載量に限界があるので、重量当たりのエネルギー量が多いということは、それだけ無寄港で長距離の航海が可能だということになります。
さらに煙が出にくいため、敵に発見されにくく、さらに自身の煙で視界不良になることも避けられます。
そのため、特に戦時における無煙炭の威力は絶大な物でした。
そして、イギリスのウェールズ地方でとれる無煙炭は高品質で有名でした。
ウェールズといえばシルル紀、オルドビス紀、カンブリア紀といった古生代の区分名の語源となった地域です。
古生代の地層が地表付近に露出している場所が多い古期造山帯に属しています。
イギリスで産業革命とロイヤルネイビーを支えたのは、このウェールズ産の石炭でした。
このことが実は日露戦争で非常に重要な意味を持ちます。
イギリスはロシアに対する石炭の輸出を止め、日本にウェールズ産の無煙炭を安く提供し続けたのです。
そのために、バルチック艦隊は品質の悪い石炭で日本海に向かわざるを得なくなりました。
日本海海戦での劇的な日本海軍の勝利の裏には、戦略資源としての石炭も大きな要素の一つだったのです。
現代の石炭はというと、安いけども環境に悪い燃料というイメージがあるかもしれません。
しかし日本の火力発電に関して言えば、脱硫・脱窒技術がかなり進歩していて、NOx・SOxの排出は非常に低く抑えられています。
かつてのように煙突から黒い煙がもくもく出てくるような物ではなく、ほとんど煙を出さない発電システムで運用されています。
とはいえ、CO2の削減という観点では今後減らすべき資源かもしれません。
石炭は長期的には廃れていくのかもしれませんが、まだまだ必要とされている重要な資源なのです。
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