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本当はいらない子?「モル」
育志館大学受験科ウィンゲート講師の一色です。
今回で基本単位は最後になります。
㏖をご紹介しましょう。
定義はとても簡単で、アボガドロ数の数だけ粒子が集まったものを1㏖と名づけています。
粒子が1㏖集まった物体は、その物質の原子量や分子量にグラムを付た物をそのまま質量として扱えるのでとても便利です。
ちなみに名付け親は、オストヴァルト法で有名なヴィルヘルム・オストヴァルトです。
さて今回の話題は実は㏖の歴史ではありません。
これまでお話した基本単位に㏖を加えることに違和感があると思いませんか。
というのも、㏖は個数を表現するための単位です。
本来個数に単位はあるません。
2㎏の物体が2個あっても、合計は4㎏であって4㎏・個とは言いませんよね。
なので㏖は本来基本単位として定義する必要がないという意見もあるのです。
この辺りは基本単位を何のために定めるのかに関係するように思います。
実際㏖を使わずに他のあらゆる単位を表現することはできますが、そうすると至る所にアボガドロ定数を使わなくてはならなくなります。
例えばモル濃度で1.0㏖/Lと同じ濃度を、モルを使わない個数濃度で表現するなら6.0×10^23個/Lとなってしまうように、すぐには把握しずらい桁数になってしまいます。
かといって、毎回アボガドロ定数をNAなどの文字で表すのも面倒ですよね。
㏖を基本単位とすることで、アボガドロ定数を使わない表現が可能になるというのは、結構便利な物なのです。
実際に使用する立場から考えれば、㏖を基本単位とするのは理にかなってると言えます。
一方、全ての単位を必要最小限の単位だけで表現するという基本単位の美しさに魅力を感じる人たちにとっては、㏖は邪魔な存在です。
そもそもメートル条約から始まる国際的な単位統一の動きは、地域ごとに単位が異なることで生じる不合理をなくそうという動機から始まりました。
そのため、実用性を重視する前者の見解の方が国際度量衡委員会の精神には適っていると言えそうです。
しかし、基本単位とは何なのかを突き詰めたいという気持ちも科学者達にはあるのです。
これは世界の基本原理が何なのかという問題でもあります。
物体の温度は分子の運動エネルギーによって決まるのだから温度の単位はいらないのではないかとか、質量はエネルギーと交換可能だから質量の単位はいらないのではないかという考え方もできますよね。
これらの物理的性質すべてについて統一理論が完成したら、もしかすると単位は一つだけでよくなるかもしれません。
そのような科学の最終目標に少しでも近づくことがとても魅力的なので、少しでも基本単位を減らしたいという動機に繋がるわけです。
㏖不要論はこのようなダイナミックな科学の発展の表出という面もあるのです。
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