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人類史と共に歩んできた「秒」
育志館大学受験科ウィンゲート講師の一色です。
ここまで長さと質量の単位が定義されましたが、これだけだとまだニュートンの運動方程式は記述できません。
さらに時間の単位「秒」が必要です。
今回は秒がどのように定義されてきたのかについてお話します。
時間を単位ごとに区切るという発想は実はかなり以前からありました。
太陽の位置が一周するのが1日、月の満ち欠けが1週するのが1月、太陽の軌道の変化や星の配置の変化が1週するのが1年。
これらの単位は文化圏や時代ごとに多少の差はありますが、概ねこのように定義されました。
これらの単位を使って暦を作ることで、人類は農作業などをするタイミングを測っていたのです。
このような初期の暦は文字の発明以前からあったようです。
たとえば歌や神話などの形で、口述で子孫に伝えていったと考えられています。
では次に、1日をさらに細かく分けていきましょう。
オリエントと中華の古代文明では共に、太陽が出ている時間と沈んでいる時間(つまり昼と夜)をそれぞれ12等分していました。
これは昼であれば日時計で計測することができますね。
なぜ12等分なのかははっきりしませんが、1年が12ヶ月あることから来ているのかもしれません。
ちなみに1年が12ヶ月あることから1ダースのように12でひとまとめにする数え方が生まれました。
12等分という分け方は当時の天文学ではごく自然なことだったのかもしれません。
さてこの分け方ですが、これをそのまま今の時間の定義とするわけにはいきません。
季節や場所によって昼と夜の長さが変わるからです。
このような長さが変化する時間の決め方を不定時法と呼びます。
古代であればその程度の差が問題になることはないのですが、このずれが重要になってくると、1日を等分する形で時間を区切るようになりました。
これを定時法と呼びます。
ただ、東アジアではしばらく不定時法が使われ続けました。
日本で定時法が一般的に使われるようになったのは明治以降です。
機械式時計が普及する前は、1時間の長さの差が問題になるようなことがなかったためでしょう。
実は正確な時間の概念が普及するには、機械式時計と鉄道の二つが鍵となるのです。
一方ヨーロッパでは、中世になってその機械式時計が発明され、分と秒というさらに細かい単位が生まれました。
当時のヨーロッパではまだ十進法の小数がなかったので、1より小さい数はエジプト式の分数かメソポタミア式の60進数を使って表記していました。
そこで60進数を使って、1時間の60分の1を1分、さらに1分の60分の1を1秒と定めたのです。
当初は分や秒を正確に表せるほどの精度の高い時計はありませんでしたが、17世紀になってホイヘンスが振り子時計を発明したことで、分や秒を視覚的に認知できるようになりました。
ちなみにこのブログでおなじみのロバート・フックは、ホイヘンスの時計をさらに改良し、ゼンマイ式時計を発明しました。
これによりさらに正確な時間の計測ができるようになったのです。
それでも一般的に分や秒が意識されるようになるのは産業革命以降の話です。
特に鉄道のダイヤで必要になったことが普及のきっかけになったと言われています。
さて、このように最初は地球の公転周期から定義された秒ですが、これはもちろん今となっては正確な定義の仕方とは言えません。
地球の公転周期が一定ではないからです。
そこで、現在ではセシウムが吸収するマイクロ波の周波数を基に1秒を定義することにしています。
これなら1億年に1秒程度の誤差しかありません。
それでも誤差をゼロにはできないところが、単位の面白いところですね。
以上の様に秒という単位は他の単位と比べて圧倒的に歴史の長い単位なのです。
有史以前、人類が農耕を始めたころからの知恵の積み重ねが、この単位にはつまっているのです。
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