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リットルは「ℓ」か「L」か

育志館大学受験科ウィンゲート講師の一色です。

 

皆さんは単位のリットルを書くとき、どのように書きますか?

私を含め一定の年代以上であれば筆記体の小文字で「ℓ」と書くのではないでしょうか。

しかし最近の教科書では「L」と大文字で表記されています。

私もついクセで「ℓ」と書いてしまうのですが、「L」が今では正式なので直さなくてはいけません。

なぜこのような変更がなされたのか、今回はその歴史をたどってみたいと思います。

 

フランス革命真っ只中の1790年、タレーランがある提案をしました。

「世界中の単位を統一しよう」

既存の国家の枠組みを超えて理性による統治を目指すという、革命の精神を体現する提案でした。

この提案はその後、1875年のメートル法と国際度量衡委員会の設立によって実現しました。

リットルという単位もこの時に定義されたのです。

今では体積はメートルのみを使いますが、当時はリットルも正式な国際単位だったわけです。

 

このような経緯でフランスが中心となって作った単位なので、メートル同様リットルもフランス語由来です。

元々ワイン1瓶を指すリトロンという単位があったのですが、それが語源になっています。

この語源が実は問題になるのです。

単位を表す記号には大文字のものと小文字のものがありますが、伝統的に人名由来の単位は大文字で始め、それ以外は小文字で表すのが慣習になっていました。

N(ニュートン)

Pa(パスカル)

W(ワット)

C(クーロン)

などなど、大文字の単位は偉大な科学者たちの名前が由来になっています。

それに対してリットルは人名由来ではありません。

そのため「l」と小文字で表記することが決められました。

 

ところがこの表記、非常に紛らわしいですよね。

数字の1や、大文字のI(アイ)と混同してしまいます。

そこで日本など一部の国では筆記体の「ℓ」にして区別できるようにしたのですが、アルファベットのネイティブユーザーにとって、普段使わない書体をわざわざ使うのは面倒です。

そのため筆記体の「ℓ」はなかなか普及しませんでした。

もちろん大文字の「L」を使用すべきだと主張する人も多くいました。

しかし、人名でないリットルがニュートンなど偉大な科学者たちと肩を並べることに抵抗がある学者も多く、なかなか改正の機運は高まりません。

そういうわけで、世界の人々は紛らわしい「l」を使い続けなければならなかったのです。

 

事態が動いたのは1978年のことでした。

ケレス・ウールナーというカナダの学者が、リットルの語源はクロード・リットルという学者だという記事を発表しました。

これはエイプリルフールのジョーク記事だったのですがあまりによくできた話だったので多くの学者が信じてしまい、1980年になぜかIUPACが事実として雑誌に掲載してしまったほどでした。当然すぐに撤回されましたが。

もちろんこれだけがきっかけになったわけではありませんが、この頃にはリットルを大文字表記にするべきとの意見が多く、ついに1979年の国際度量衡総会では小文字と大文字両方を正式な表記として認めたのです。

 

今では日本をはじめ、ほとんどの国が大文字表記を推奨しています。

「ℓ」に慣れてしまっている皆さんもこの機会にぜひ、「L」表記に改めて国際的な波に乗り遅れないようにしましょう。

 

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